Arc’teryx Beta SL Hybrid を衝動買い。Gore-Tex Paclite Plusの感想

Arc’teryx Beta SL Hybrid Jacketをポチるまで

この冬は Arc’teryx のジャケット衝動買いがいくつかありました。

セールなどタイミングさえよければ海外正規店やオークションなどでは、送料入れても半額から三分の一くらいまで値段が下がります。もちろん闇雲に飛びつくと偽物もたくさんあるところですが、そこは半分自己責任。何度か日本の正規店で見たり買ったりしていたので、写真をじっくり見たり、到着した後にいろいろ確かめれば本物か偽物かはなんとか判断が付くかなというところです。オークションだと質問投げたらそのまま商品が消えてしまったり、説明を変えて別の品にされた場合も何度かあったので、そのあたり自身が無い方は変に安いものに手を出さない方がよい気がします。

その中で今回結構悩んだ挙句にえいやっと買ってしまったのが、Arc’teryx Beta SL Hybrid Jacketの2019年モデル。モデル番号も18972から、新しい23705に代わっています。Betaの後継のZetaが出ただの、Beta SLが廃版になってしまうだの、動きが激しいシリーズですが、Hybrid版は相変わらず残っています。今はAlpha SLも無いので、SLが消えたのかな。

なお、これまで売り買いしながら試してきたレインウェアはこんな感じです。

  • モンベル ストームクルーザー。登山を始めたころにはド定番と言われたこれ。今はC-Knit Backerテクノロジーなど、なめらかで透湿性も上がっていますが、当時はシャカシャカでジッパーもかなり固め。そして一番困ったのが体形が合わない。手の長さを合わせると、おなか回りに余裕がありすぎて結構見苦しい感じに。
  • パタゴニア レインシャドウ。軽くてしなやかということで試していましたが、思ったよりも活躍せず。表面で水をあまり弾かずに濡れた感じになります。表面も耐摩耗性が無いので結構慎重に扱いました。
  • ノースフェース ストライクトレイルフーディ。このころはU.L.も取り上げられて少しでも軽いレインウェアを求めていました。ただし、ぺらっぺらだし、裾も短めですし、お守り用と化しました。

そして今回の Arc’teryx Beta SL Hybrid。実は、Beta SLやAlpha SLなどはこれまでも何度か考えたことがあったのですが、気になる点がありました。

  • Gore-Tex Pacliteを使っている!これは裏地にポリウレタンを吹き付けており、経年劣化する要因になります。Gore-Texメンブレン自体は他の素材と違ってかなり劣化しずらいと言われていますが、裏地が剥離したらどうしようもない。また実物を見るとつるつるでぺたぺたします。肌触りが微妙ですし、透湿性を疑う素材だったので、ずっと放置していました。
  • 脇下のピットジッパーがない。これは要る派と要らない派に分かれます。が、個人的には要る派。大体の透湿素材は蒸れますよ。特にGore-Texは蒸れないと透湿できない仕組みになっています。時々は換気必要。

ところが、最近Pacliteの改良版、Paclite Plusが出たというではありませんか。ゴアテックスのHPを見ると確かに Paclite Plus の説明が増えています。

でよーく見ると、2019年モデルから、Paclite Plusを使ったモデルがちらほら出始めているようなのです。Arc’teryxの場合、この Beta SL Hybrid と Zeta SL、Zeta FLあたりに使われています。このうち Beta SL Hybrid は脇下のピットジッパー付きです。

公式HPにあるように、Paclite Plusは裏地がない2層モデル。メンブレンを強化し、また凹凸をつけて肌触りもよくなっています。しかし、あまり評価記事がなく、どれほど違うのか未知数な状況でした。

2019年モデルで出たばかりですし、しばらくは様子見かなと思っていたところ、なんと海外のサイトで230USDで発見!何度見てもモデル番号やカラーを見ても2019年モデル。税金や送料がこれに加わるとしてもお得です。

この新型モデルが出たことで、2018年度までのものが値下がりしてねらい目というのはありますが、まさか最新モデルが日本定価の半額とは。悩んだ末にポチってしまいました。

Arc’teryx Beta SL Hybrid Jacketの到着

海外だったので、到着待つこと2週間ちょっと。届いた品がこちら。

海外だと適当なふにゃふにゃのビニール袋に入れて送ってくるのですが、洋服でそれも耐久性をうたうジャケットなら特に心配することもありません。

色は Lampyre
RSジッパースライダー 。持ち手も紐ではなくプラスチック?ゴム?のような素材です。
ピットジッパー。これが欲しい。
ポケット周りはC-Knit Backer でN42p。その下はPaclite PlusのN40r。少し色が違います。
また強度を出すためか、Paclite Plusの方はグリッド上の 糸 が見えています。
裏側を見たところ。右側の白っぽい方が C-Knit Backer 。左側の黒い方がPaclite Plus。 C-Knit Backer の方がサラサラつるつる感があります。Paclite Plusはざらざら感
Paclite Plus 。表からも見えていたグリッド上の糸が見えます。

基本登山用なので、色は目立つ Lampyre 。意味をググったら幼虫の絵が出てきましたが、どうやら蛍色のようです。40デニール以上あるので生地は少し硬め。ただ着ている分には全く気になりません。折りたたむときに小さくなりづらい感じがします。

気になっていたPaclite Plusの生地ですが、確かに以前のPacliteに比べてざらざら凹凸感があります。ぱっと見ポリウレタンコーティングじゃないかと思いましたが、後日Pacliteと比べてみると明らかにつるつる感が違ったので、本当に2層なんだと期待します。

軽量なレインウェアに使われるPaclite Plusですが、これは C-Knit Backerとのハイブリッドモデルで、さらにピットジッパー付きなので、そんなに軽くはなく、実測で 343g(Sサイズ)。Alpha AR Jacketが367g(XSサイズ)なので、あまり変わらない。少しの重さとお財布さえ許せば、 Alpha AR の方がピットジッパー付きでGore-Tex Pro素材ですし、冬山のハードシェルとしても使えるモデルなのでおすすめかも。ただ、Pacliteの生地でも40デニールはあるので、森林限界を超えない冬山であればカバーできそうな感じです。

なおBetaシリーズといえば、街着向けで最も着丈が短いという扱いですが、Hybridは例外的に着丈が長いです。同サイズのAlpha FLよりも同じか少し長いくらいだったので、登山用に振っているようです。

くるくると丸めてフードに入れるとこんな感じ。スタッフサックに入れず直接ザックに放り込みます。

一度は軽量化の道に走ったレインウェアですが、結局このあたりの重さやスペックに戻ってきてしまったのは、軽量化されたレインウェアが頼りなくなってしまったから。

ポリウレタンを内包する新素材は3年過ぎると加水分解などの劣化が始まってしまいますし、ぺらっぺらの素材は風や雨の感覚をダイレクトに肌に通します。体はぬれないけれど雨に打たれている感じがして心もとない。また空気の隙間も押しつぶして温度がじかに伝わってひんやりします。寒いです。雨は通さないけれどそれ以外を通してしまうので、体を守るシェルという感じがほとんどしない。

さらに、表面の撥水力がすぐに落ちてしまうものが多いと感じています。防水メンブレンなどは水は通しませんが、表面の撥水力が無くなって保水すると、ご存知の通り透湿しなくなります。そのため撥水力は結構大切なのですが、軽量化をして、さらに柔らかく着やすくなった素材というのは、細い糸でさらに密に編んでいないので保水しやすく撥水力が足りません。表面加工して撥水力を持たせていはいるものの、構造上撥水しやすい方が性能が長持ちします。

そんなこんなで、世の中が軽量化に走る中でも極端な軽量化もせず、生地も40デニールという中程度(PROでの最低ライン)の糸を密に織って固めの生地にして、動きやすさは立体裁断でカバーするというArc’teryxに流れ着いた感じです。気分は布の鎧。最近ではようやくZeta FLという205gの軽量レインウェアを出してきましたが、軽いハイキング用で、なおかつ緊急時用とあまり耐久性は無いようです。実物も見ましたが多少生地に張りはあるものの、ペラペラ感が出てきていました。

3月末の冬山ハイキングに使ってきました

3月末に残雪が残る谷川岳山麓をハイキング。当日は時折雪が舞って強風も吹く日でしたが、ベースレイヤーにフリース、そしてこのBeta SL Hybridで快適でした。

少しハイクアップするとすぐに体が熱くなるので、脇のピットジッパーを開けての行動。風が吹くときにちょうど風を通してあげるとちょうど蒸れが抜けていく感じです。山から吹き下ろす冷たい風を受けてもびくともせず、シェルの安心感がありました。

そしてちょっと驚いたのはその透湿性。正面のジッパーの裏側は、加工がしてあるためか、ほとんど透湿しないようです。ふと正面のジッパーを開けると汗でびっちょり。

ところが、他の部分はさらっさら。Paclite Plusの裏側は全く濡れていません。うまくフリースから汗を吸い上げて透湿してくれているようです。他の素材だとどういう状態になるかの比較はできませんが、思った以上に透湿してくれていました。

夏などの季節では、周りの湿度も高いのでそう同じようにはいかないと思いますが、ピットジッパーもありますしオールシーズン活躍してくれそうです。