Arc’teryx ATOM LT と Patagonia ナノエア を比較する

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どっちが暖かい?ATOM LTとナノエア

動けるインサレーションとして、よく話題に上がるのがArc’teryxのATOM LTとPatagoniaのナノエアです。ともに評価は高く、すでに持っている人はともかくこれから買おうかなと考えている人にとっては悩みの種。私は悩んだ末に両方買って、今度はどっちを持っていこうか悩む羽目になりました。そこでその違いをちょっとメモ。

 

ATOM LT HOODY

ATOMは、Arc’teryxで合成インシュレーティッドミッドレイヤーといわれる分類に属します。ほかにも、より薄いATOM SLやより暖かいATOM ARが出ています。以前はATOM SVもあったようですが、今は廃番のようです。

表面は、 Tyono™ 20 denier shellというもので耐久撥水仕上げがされています。触り心地は柔らかくさらさらと滑らかで、触り心地環悪くありません。突っ張ることもないので、ミッドレイヤーしても問題ないレベル。

保温材としては、Coreloft™ 60 (60 g/m²) が入っています。この化繊インサレーションでよく使われる g/m²という表現は、一平方メートルあたりに何グラムの保温材が入っているかを示したもの。60と書いてあるからと言って一着に60g入っているわけではありません。数字が大きいほど厚く温かくなると思ったほうが良いです。

 

そして最大の特徴は、脇のところには保温材が入っておらずポーラテックのパワーストレッチが使われていること。そこそこ薄くて、この部分を口に当てて息を吐くとほとんど抵抗を感じずに息が抜けます。つまりこの部分についてはほとんど防風性がありません。

しかしこの脇の防風性の無さが、ATOM LTの最大の特徴で行動中に着ても蒸れません。よくハードシェルには脇下にベンチレータがありますが、それと同じ役割を果たしています。正面背面の防風性と、脇の防風性の無さの組み合わせが絶妙で、多少風吹く中、寒い中行動するにはとても快適です。

代わりに温かさという面では少し劣ってしまい、休憩中などは脇下から熱が逃げていきますから寒く感じます。よくATOM LTはそんなに暖かくないといわれるのはこのあたりが原因と思っています。

 

ナノエア・ジャケット

patagoniaのナノエアは、着っぱなしというコンセプトで作られた全行動用のインサレーションです。行動中でも休憩中でも脱ぐ必要がない快適さをうたっています。最近はより薄いナノエア・ライトも登場しました。

ナノエアの一番の特徴と思うのはその肌触りのよさ。着る布団とまで言われるさらさらフワフワの布団のような感触は、かなりインパクトがあります。

その表面生地は、メカニカル・ストレッチ織りの1.3オンス・20デニール・リップストップ・ナイロンで、DWR(耐久性撥水)加工済みですから、ATOM LTと似たような強度ですね。ただ、柔らかい生地の特性か毛玉ができやすく、耐久性は今一歩な感じがしています。また透湿性が高く、代わりに防風性に劣ります。

 

保温材については、わきの下含めて全面に入っています。ポリエステル100%の60グラム・フルレンジ・ストレッチ・インサレーションというもので、ほとんど保温材の重さとしてはATOM LTと似たようなレベルです。

 

比較

基本分厚いほうが暖かいかと思って、三つ折りして並べたのが上の写真です。嵩はあまり変わりません。保温材としてはほぼ同じ。脇下の防風性、保温性は無いが他の部分の防風性は高いATOM LT。全体に保温材が入っているが、全体的に防風性が低めなナノエア。

個人的な結論としては、総合的な暖かさはナノエアが上かなと考えています。ATOM LTはやはり横から熱が逃げやすいので、上にシェルを羽織ったとしても総合的な暖かさを得にくいところがマイナス。ただ、ラフに扱える丈夫さ、行動中のバランスの良さ、コンパクトにたためる圧縮率の良さ、あとはかっこよさ!で山に持っていくのはATOM LTが多い気がします。ナノエアはずっと着っぱなしになるような寒いときには活躍しそう。

 

ついでに

嵩をダウンと比較してみました。左はモンベルのEXライトダウンジャケットです。900フィルパワーでふんわりと嵩出てますね。重さが150g程度に対して、ATOM LTやナノエアは300g台ですから、ダウンの重さに対する暖かさもわかろうというものです。

ただし、ふわっとするとこんな感じですが、ザックを背負ったり、シェルを上から着るとダウンはつぶれて嵩が減ってしまうので要注意。とくにEXライトダウンジャケットは放っておけば膨らむのですが、弾力がさほどないので力をかけるとペシャっと潰れます。ダウンを選ぶときはフィルパワーだけではなくてこんなところも重要なポイントだなと感じます。